| 語句 | どごにどごに、なもなも |
| 語句解説 | 両方とも反語表現です。言いたいことと反対の意味を、あえて疑問の形にして述べることで、自分の主張や否定の気持ちを強調する言い方です。 |
| 使用例 | 【道南のある奥さん同士の会話】 Aさん:「あら奥さん、昨日はうちの子が大変ご馳走になりまして」 Bさん:「なもなも」 Aさん:「うちの子供が、おばさんはとっても料理が上手だって・・・」 Bさん:「な~もなも」 Aさん:「うちの子が”今度はうちでうんとご馳走してあげてよ”と言うので是非」 Bさん:「どごにどごに」 |
| 解説 | 最初の「なもなも」は「いいえ、どういたしまして。ご馳走だなんて大げさな、そんな気遣いしないで下さい」という気持ちを表しています。 次の「な~もなも」は「私の料理が上手なんてお恥ずかしい」と照れているのです。 そして、「どごにどごに」は「どこにそんな事をする人がありますか。いつもうちの子がお世話になっているのに、一度くらいお呼びするのは当たり前の話。それなのにお返しなどする人がありますか」と強くお断りしているのです。 ****************** 短い言葉の中に、こんなにも沢山の意味や気持ちが込められているんですね。 |
| 参考 |
| 語句 | 「ひ」と「と」の置き換わり |
| 語句解説 | 〔古語における「は行」の正しい変化〕は以下の様でした。 ・奈良時代以前:パ・ピ・プ・ぺ・ポ ・平安時代:ファ・フィ・フ・フェ・フォ ・江戸時代:ハ・ヒ・フ・へ・ホ |
| 変化例 | 「母」と「花」の発音の変化例 ・奈良時代以前:パパ、パナ ↓ ・平安時代:ファファ、ファナ ↓ ・江戸時代:ハハ、ハナ |
| 解説 | 古語(古い日本語)の発音は時代によって上記のように変化したそうです。この時代の変化とは別に場所の違い(地域の発音の違いによる表現のしやすい音への変化があったと思われます。つまり、弱い音の「ひ」よりも、出しやすい強い音の「と」の方が「勢いよく裏返る」さまを表現しやすかったため、「とっくり返す」に変化して定着したようです。 |
| 参考 | 他の例では「びっくりする」が「どってんする」があり、「び」が「ど」に変化している例もあります。 |
| 語句 | 馬喰(ばくろう) |
| 成り立ちと歴史 | 1.語源は中国の「はくらく」 もともとは中国に馬の善し悪しを見抜く名人である「伯楽(はくらく」が語源だそうです。これが日本へ伝わり、訛って「ばくろう」と呼ばれるようになったようです。 2.江戸初期は「博労町」 徳川家康が江戸を開いた当初、幕府の馬場が作られ、馬の管理や売買を行うプロである「博労頭(ばくろうがしら)」の高木源兵衛や富田半七らが住み着いた場所が職業名そのままに博労町と記録されました。 3.正保年間に「馬喰町」へ改称 その後正保年間(1644年~1648年)に町名を、この場所が馬を取引する場所であることが一目で伝わるように「馬喰町」へと正式に改められました。 |
| 改称の 真相 |
博労町(ばくろう)→馬喰町(ばくろう) 「ばくろう」という言葉の響きを維持したまま、街の役割(馬の市場)をアピールするために「馬」という漢字が選ばれたのが「馬喰町」への変化の真相のようです |
| 馬喰の 仕事 |
馬喰たちが巧みな駆け引きや売買とは 馬主Aは馬が年老いてきて馬力は不足してきたため元気な馬を探している。馬主Bは乱暴な馬でコントロールが難しいため、おとなしい馬を探している。馬喰は馬主が不満な両方の馬を安く買い上げ、馬主Aには「元気の良い馬」として、馬主Bには「おとなしい良い馬」として高く売りつけ、利益を得ます。両方の馬主にとっても、仲介者にもメリットがありますね。 |
| 参考 | 北海道における馬喰(ばくろう)は、明治の開拓期から昭和30年代後半(1960年代)にかけて、農業と開拓を陰で支え続けた必要不可欠な存在でした。重労働を担った「どさんこ(北海道和種)」をはじめとする農耕馬であり、「農家1戸に最低1頭」と言われるほど家族同然に大切にされていました。この馬たちを農家に調達・斡旋し、流通させていたのが「馬喰」です。 |
| 語句 | ごっぺ |
| 語句解説 | 「ごっぺ」とは鳩の形をした横型の徳利(鳩徳利)で、鳩燗(はとかん)ともいいます。囲炉裏の灰に差し込み、炭火の熱で酒を温める酒器で、発祥は江戸時代後期頃とされ、日本の伝統的な炉端文化の中で使われてきました。これが、ニシン漁のヤン衆と共に北海道にきたのでしょう。 |
| 写真 | 「ごっぺ」の写真 |
| 解説 | 鳩燗を「ごっぺ」と呼ぶようになったのは小樽辺りと言われているそうです。とすると、フゴッペが鰊場の一つだったこと、鳩に馴染みのないヤン衆は鳩を「ごめ」に置き換えた、などを合わせて考えると「ごっぺ」は混同・方言的な変化である可能性があるかも知れません。 |
| 参考 | 余市町フゴッペ(畚部)にあるフゴッペ洞窟はおよそ2000~1500年前の続縄文時代の遺跡です。洞窟の岩壁には200を超える絵が刻まれています。 |
| 語句 | ままくたが、えだがぁ |
| 語句解説 | 一般的に、知人の家を訪ねる時の挨拶は「ごめんください」である。しかし、昭和40年代位までの西沿岸地区の漁村では「ままくたが」であった。直訳は「食事は終わりましたか?」ですが、「ごめんください」「もう、食事は済みましたか?もし、まだのようでしたら時間を変えますが!」という意味が含まれているのです。 |
| 他の地区の使用例 | このような挨拶は奈良県吉野地方に「もうめしたーかい」とあり、お隣の中国でも「吃飯了麽(チーハンラーマ)」という挨拶があったそうです。勿論、「ご飯が済みましたか」という意味であり「ままくたが」と全く同様のようです。 |
| 類似語句 | 類似の挨拶に「えだがぁ」というのもあります。それに対する返答は「えだえだ、あがれあがれ(がは鼻濁音)」となります。これを共通語に直しますと「ごめんください、○○さんいらっしゃいますか?」「はい居ります。どうぞ、お上がりください」とこんなもんでしょうか! |
| 参考 | 「ままくたが」「えだがぁ」という挨拶は短く・分かりやすく・合理的な挨拶なんですね。 |
| 語句 | わらしゃんど(わらはんど) |
| 語句解説 | 「~んど」は東北弁の名詞の後に付いて「~たち」と複数形を表す接尾語です。東北弁には他にも似たような「~んど」を使った代表的な言葉の例が沢山あります。 |
| 類似語句 | 家族・親族を表す「~んど」 ・じっちゃんど:お爺さん達 ・ばっちゃんど:お婆さん達 ・あねちゃんど:お姉さん達 人称を表す「~んど」 ・わんど:私達 ・おめんど:あなた達 仲間や立場を表す「~んど」 ・けやぐんど:友人達 ・あるじんど:主人達 ・あどんど:後から来る人たち |
| 参考 |
| 語句 | 「わ」と「な」 |
| 語句解説 | 道南や西沿岸の漁村で話される浜言葉で、明治から昭和にかけてニシン漁が盛んなときに津軽出身のヤン衆が伝え、一部の漁村に伝わった言葉のようです。 |
| 使用例 | Aが道端で出会った友人Bとの会話です A:「な、どさ?」 B:「わ、ゆさ!」 標準語では A:「あなたは何処へ行くのですか?」 B:「私はこれから銭湯に行くところです」 とてもシンプルな会話ですね。 |
| 参考 | 北国(特に北海道)では気温が低く、冬などは口を開くことさえ最小限にしなければならなかったのでしょう。一人たった3文字で会話が出来る方言は、なんて素晴らしい会話ツールなんでしょう。 |
| 語句 | 天を切る(てんきる) |
| 語句解説 | 明治の初期から中期にかけて、本州各地から移り住んだ労働者や賭博師によって持ち込まれました。しかし、本州には花札の製造元が沢山あったため、地域毎に図柄やルールが微妙に違い、トラブルの元になりました。そこで、共通の北海道ルールが必要になったということです。そのルールの一つに「山札の上半分を切り分ける動作」があり、これを「天を切る」と名付けたそうです。 |
| 天を切る の詳細 |
花札を3人で行う場合、親→胴二→ビキの順番になります。 1.ビキ又は親が札をよく切り(シャッフル)、胴二の前に出す 2.胴二が山札を2つに分け、上下を積み替える(天を切る) 3.親は天を切られた山札を受け取り、各プレイヤーと場に札を配る |
| 参考 | 花札は家族の娯楽として楽しむことが多かったようで、「天を切る」という花札専門用語が日常会話に残り、「トランプをてんきる」になったり、青あざを「あおたん」と呼んだんでしょうね。 |
| 語句 | ~しょ(殆どが女性言葉) |
| 語句解説 | 「~しょ」には以下の活用形があります |
| 活用形とその例 | 1.名詞+しょ→花っしょ 2.動詞+しょ→行くっしょ 3.形容詞+しょ→寒いっしょ |
| ニュアンス別 | 「寒いっしょ」の例 同意・確認:寒いしょ 同意・強調:寒いしょや 同調・納得:寒いしょね |
| 語句 | ~べ |
| 語句解説 | 「~べ」には以下の活用形があります |
| 活用形とその例 | 1.名詞+べ→花だべ 2.動詞+べ→行くべ 3.形容詞+べ→寒いべ |
| ニュアンス別 | 「寒いべ」の例 1.推測・主張 :寒いべ 2.疑問・問いかけ:寒いべか 3.独り言・疑問 :寒いべな 4.同調・主張 :寒いべさ 5.強調・主張 :寒いべや |
| 語句 | ほまち(帆待ち) |
| 船乗りの特権 | 北前船の乗組員には、給与の他に「自分荷物(じぶんにもつ)」を船に乗せる特権が認められていたそうです。この私的な荷物をこっそり売却したり、臨時の運送を請け負ったりして、船主に内緒の現金を稼いでいたそうです。このお金を航海用語で「帆待ち」と呼んだそうです。 |
| 北海道への定着 | 北前船は「動く総合商社」と呼ばれ、大阪から瀬戸内海、日本海を経て、北海道(松前、江差、小樽、石狩など)を往復していました。船乗り達は寄港地や終着地である北海道に上陸して「ほまち(内緒の小遣い)」を使ってお酒を呑んだり、買いものをして、寄港地の経済が潤ったことでしょう。そんなことから「内緒の蓄え=ほまち」が北海道に根付いたと思われます。 |
| ほまちのその後 | 「ほまち」は江戸時代から昭和まで使われた言葉で、現代ではほとんど使われていない死語になったようです。いまではキャッシュレス社会ですから「へそくり」も使われる機会が減ったようですね。 |
| 語句 | 「あやつける」と「いいふりこく」 |
| 説明 | 北海道では両方とも「格好つける、見栄を張る」という意味です。しかし、北海道への流入ルートが違うようで、現在の使用状況から「あやつける」は東北津軽方面からの、「いいふりこく」は東北南部や秋田方面からのニシン漁ヤン衆がそれぞれ使っていたと推測されます。そんなことから、両方とも道南から西沿岸地域に定着したと考えられます。 |
| ニュアンスの違い | 【あやつける】 「ちょっと良い格好をしている状態」を指し、少し茶化すような軽いトーンで使われる場合が多いようです。 【いいふりこく】 外見ばかり気にして自分を実際より良く見せようとする、少しネガティブな「見栄っ張り」の性質を指すことが多いようです。 |
| 使用例 | 1.朝から「あやつけて」何処行くのさ? 2.いいふりこいてんじゃねえよ! 〔Wで使う場合もあります〕 3.「あやばっかりつけてぇ」この「いいふりこき」がぁ! ※あまりの見栄っ張り具合に、見ていられなかったんですね。 |
〒069
北海道江別市
・参考:北海道の方言紀行、やっぱり北海道だべさ etc
・影響地区は推定です